このたびはALLBLUE CARSにご入庫いただき、誠にありがとうございました!
橋本市よりお越しのT様。BMW 330e(F30型)にお乗りで、「メーターにドライブトレーン異常の警告が出る」とご相談をいただきました。
走りに不具合は感じないものの、警告が出たり消えたりを繰り返しているとのこと。実はこの警告、以前にも一度出て消去されていた形跡がありました。しっかり原因を突き止めてまいります。
ご入庫車両のご紹介
- 車両:BMW 330e iPerformance(F30型 プラグインハイブリッド)
- 年式:平成30年8月
- 走行距離:41,871km
- ご依頼内容:ドライブトレーン異常の警告灯 原因調査・整備
まずは切り分けから
BMWのドライブトレーン異常は、原因が非常に幅広い警告です。エンジン、燃料、点火、電気系、ハイブリッドシステム——どこが原因でも同じメッセージが出ます。そこで、まずは範囲を狭めるところから始めました。
診断機でエンジン系のデータを確認したところ、
- 故障コード 0件
- 空燃比(λ)1.00、O2センサーも正常値
- 燃圧、点火時期、アイドリング回転数すべて正常
- 充電電圧 13.9〜14.0V で安定
エンジン側も充電系も、まったく異常なし。発電はきちんとできていることが確認できました。となると、疑うべきは「電気を受け取る側」です。
決め手は充電状態の履歴でした
BMWは、バッテリーの充電状態を長期にわたって記録しています。この履歴を読み出したところ、決定的なデータが出てきました。
| 充電状態 | 積算時間 |
|---|---|
| 0〜40% | 105時間 |
| 40〜50% | 3,674時間 |
| 50〜70% | 55,219時間 |
| 70〜85% | 18,244時間 |
| 85%以上 | わずか116時間 |
合計するとおよそ8年9か月分。この車の初度登録が平成30年8月ですから、新車から一度もバッテリーが交換されていないことを示しています。
しかも生涯の7割以上を50〜70%という低めの充電状態で過ごし、85%以上に達した時間はわずか116時間(全体の0.15%)。かなり厳しい使われ方をしていました。
バッテリーを実測してみると
一晩置いてから、実際にテスターを当てました。まず見るべきは電圧と内部抵抗です。この2つは測定条件に左右されにくく、バッテリーの実力がそのまま出ます。
| 項目 | メイン(70Ah AGM) | 補助(40Ah) |
|---|---|---|
| 一晩静置後の電圧 | 12.06V | — |
| 内部抵抗 | 33.05mΩ | 40.40mΩ |
| 健全時の目安 | 4〜6mΩ | 8〜10mΩ |
| テスター判定 | 要交換 | 要交換 |
内部抵抗が健全な状態の6〜8倍まで上がっていました。ここが上がると、必要なときに大きな電流を流せません。電圧も一晩置いて12.06Vと、かなり深く放電した状態です。
テスターは健全度(SOH)も表示しますが、この種のテスターは「ある程度充電されている」ことを前提に演算するため、放電した状態で測ると実力より低めに出ます。ですので数値の細かさより、内部抵抗・電圧・そして車両側の記録という複数の材料が一致しているかを重視して判断しています。
今回は、85%以上に達した時間が生涯で116時間しかないという履歴、交換登録が前回・前々回とも0km=新車から一度も交換されていない記録、そして補助バッテリーの製造週が8年9か月前——これらがすべて同じ方向を指していました。
なぜバッテリーで警告が出るのか
330eはプラグインハイブリッドなので、1回のドライブでエンジンの始動と停止を何十回も繰り返します。そのためバッテリーが2個に分けられており、
- メイン(70Ah・トランク内) …… ナビや各種コンピューターなど車全体の電装用
- 補助(40Ah・エンジンルーム内) …… エンジン始動専用
という役割分担になっています。始動時の大きな電圧降下を補助バッテリー側に閉じ込めることで、ナビやコンピューターが影響を受けないようにする設計です。
ここが劣化すると、車両側の推定値と実際の状態がずれ、充電制御が正しく働かなくなります。今回も車両の記録では充電状態60%なのに、実測は10%という大きな乖離が起きていました。これがドライブトレーン異常につながっていた、というわけです。
作業内容
- メインバッテリー交換(AGM 70Ah/760A)
- 補助バッテリー交換(40Ah)
- バッテリー交換登録(コーディング)
- フォルトメモリーの消去
- エンジンオイル・オイルフィルター交換(BMW LL-17 FE+ 規格 0W-20)
ここで大事なのが 3番のバッテリー交換登録 です。
BMWは新しいバッテリーを積んだことを車両に教えてあげないと、古い劣化データのまま充電制御を続けてしまいます。せっかく新品を入れても性能を発揮できず、また同じ警告が出てしまうことに。
結果
警告メッセージは無事に消灯。試運転でも再発はありませんでした。
さらに嬉しい副産物もありました。エンジンの燃料補正の学習値が、交換前の −8.6% から −0.8% へ改善。劣化したバッテリーによる電圧の不安定さが、エンジン制御の学習値まで狂わせていたようです。
バッテリーは「始動できるかどうか」だけの部品ではない、と改めて感じた1台でした。
同じ症状でお困りの方へ
BMWのドライブトレーン異常でお悩みの方は、まずバッテリーの状態を疑ってみてください。特に、
- 新車から5年以上バッテリーを交換していない
- アイドリングストップが働かなくなった
- 警告が出たり消えたりを繰り返す
こうした場合はバッテリーが原因のことが少なくありません。また、交換したのに症状が改善しないというご相談もよくいただきます。その多くは、先ほどの「バッテリー交換登録」が実施されていないケースです。
アフターフォローもお任せください
ALLBLUE CARSでは、輸入車の診断・整備を承っております。警告灯が点いてしまった、ディーラーで高額な見積もりが出た——そんなときも、まずはご相談ください。原因をきちんと切り分けたうえで、必要な整備をご提案いたします。
海南市・和歌山市・岩出市・紀の川市・橋本市など、和歌山県内どこからでもお気軽にお越しください。
T様、このたびは誠にありがとうございました。またのご来店を心よりお待ちしております!